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さよならの数だけ大人になる2


さよならの数だけ大人になる  の続き)



はい、とも何も言わない。
何かを話してくれると、言う訳ではないかもしれない。僕は少し残念に思えた。
ただ、そこに居てくれることは許してくれたようで、良かった。
正面にいるはずの彼を、僕は確かに感じていた。
何か温かい靄が、目の前にあるのだ。人型といわれれば、そうとも思える。

「あなたは、何者ですか?」
「僕は、僕でしかありませんよ?」
「えーっと、あの、その、じゃあ、名前は?」
「ありません。」
「…へ?じゃあ、じゃあ…幽霊ですか?」
「は?幽霊なんて恐ろしいものなわけないですか。」

なんだろう。噛み合っているのか、噛み合っていないのかよく分からない会話が続く。
質問すると、僕が混乱してしまう。
幽霊が恐い?幽霊のような物体をして、何を言っているのだ。透明で、声だけする人間なんて居るはずもない。
それに、僕は一人暮らしだ。ルームシェアなんてした覚えもない。

「僕は僕です。」

凛とした声が響く。幽霊を恐がっている人物には思えない。

「そう、ですか。…じゃあ、なんで僕にさよならと告げるんですか?」
「…。」

彼は黙った。そのことは、まずいことなのか。
といっても、それが最も知りたいことなのだから、どうやってでも聞き出したい。

「あなたは、えっと、何か悲しいんですか…?」
「は?」
「いや、その、さよならなんて言うぐらいですし、あの時の声が重く、暗かったから。」
「…。」

また、彼は黙る。ああ、僕は火に油をそそいでいる。
もし、今黙っていたなら、彼から何かを聞き出せたかもしれない。

「あなたは、それが知りたいですか?」

捻りだしたようなか細い声が聞こえた。
そんなにも恐ろしいことなのか。それでも、教えてくれるのか。
頭がぐにゃりと思考を歪めた。僕もまた、恐ろしいことに首をつっこもうとしているのではないだろうか。
歪んだ思考が、ガンガンと金属を叩くように、僕を責める。

彼はそのまま、黙った。

僕も、黙っていた。声が出ない。
恐ろしいものが、恐ろしい。いつからか、恐ろしいものから逃げ出すようになっていた。
物心つく前は、子どもらしからぬ子どもだったようだ。泣かない、感情がないようだ、と。
その時のことを覚えてはいない。大きくなってから、母から聞いて知ったぐらいだ。今のあなたとまったくの別人みたいと、あっけらかんと笑われた。
可愛くない、と親戚の大人に言われたことは断片的に覚えている。
そのときに、悪意のようなものを初めて感じた、と思っている。
それからなのだろうか。
僕は、子どもらしくあろうとしたんだろうか。

大人の冷たい視線が刺さるような気がした。
僕の背を何度も、何度も刺して、殺そうとしている。
そう思うと、震えた。

「よしと」

僕の名前を呼ぶ声が、正面から聞こえる。
彼の見えない視線が、僕をさす。見えないはずなのに、僕には見えていた。
強いけれど、痛くない。血気が溢れていて、先ほどまで、か細い声を出していた人にはみえない。

かっこ、いい。

素直にそう思った。こんな人になりたい。
透明で、幽霊ではないだの言い張ってる、よく分からない物体、彼に、僕はなりたい。

熱い涙が流れた。恐いからではない。彼がすごく大きいからだ。
肩をぽんぽんと二度、何かが叩いた。彼の手だろう。
温かい。

「僕、に、理由を教えて、ください!」

涙声になりながら、声を精一杯張り上げた。
どうにか誠意のようなものを見せられたらと、意地がそうさせた。

「分かりました。」
「はい…。」
「ですが…。お願いがあります。」
「何ですか?」
「しばらく一緒に生活しましょう。」
「へ?」
「そうしたら、僕は、その理由をお教えしましょう。」

彼は、何から何まで奇妙だった。
さっきまでの強い熱意はどこか言ってしまって、くすくすと楽しそうに笑って話している。
流れていた涙も引っ込んでしまった。

僕は、彼とルームシェアすることになった。





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まとめ【さよならの数だけ大人】

(さよならの数だけ大人になる  の続き)はい、とも何も言わない。何かを話してくれると、言う訳ではな

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海

Author:海
(カイ)
女。
詩を書いてます。


ねくらのチキン

めんどくさがりだけど
くだらないことばっかするけど
いきなりマジになる


※今まで俺という主語を使っていましたが、最近、私という主語になりました。
なので、前の記事に行くと、俺という主語になってます。
人が変わったといったことではないので、ご了承ください。


気ままに更新中

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